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2005/11/18

小僧はトレモロが嫌い?

過去にマンドリン教室を担当していたところで、ある時、そこの職員さんが、だれかに「先生(小僧のこと)はトレモロが嫌いだから」みたいなことを言っているのでびっくりしたことがあります。

わたしは、トレモロが嫌いなんて、一度も言ったことがありません。むしろ大好きです。私のトレモロを聴いた方はお分かりですよね。

なぜこんな誤解が生まれたのでしょうか。

1.当時は特に古典曲を中心に演奏していた。
2.生徒さんの中に、古い音楽が好きで、その上、トレモロが苦手な人がいて、1年近く全くトレモロをしなかった。
3.クラシック音楽の関係者から、「なるべくトレモロは使うな」と言われたり、昔のフランスのマンドリン教則本に「トレモロは使うべきでない」と書いてあった(これ、本当の話ですよ)ということを周りに話していた。

などが考えられます。

最も誤解を招きやすいのは、私が演奏し発売した2枚のCDが、曲は古典のマンドリン音楽であり、2枚合わせてもトレモロはほんの数秒間しか出てこないということがあります。私がCD録音をした当時(1992年)、既に、古典曲にはトレモロを用いないことは(古典マンドリンを学ぶものに取っては)常識でしたが、使用したラトキー編集の楽譜には、たくさんトレモロの指定がありました。また、そのせいか今でも、18世紀の古典マンドリン曲をトレモロで弾く人がいるようですが、ちょっと私には理解できません。

CDの収録曲の中で、ベートーヴェンの「アンダンテと変奏」のみ、ほんの数小節ですが、トレモロを使いました。
変奏曲という性格上いろいろ変化を持たせたいと言う思いから使いましたが、いまから数年前に、外国の演奏者のCDで、それも古楽器を使った録音を聴いた際にいっさいトレモロをしない演奏を聴き、そのすばらしさに感動し、やはりあの部分もトレモロを入れるべきでなかったと改めて思わされました。

わたしは、マンドリンの関係者よりいわゆるクラシックのプロの方の方が付き合いが多く、マンドリンの演奏もその方達に聴いていただき、いろいろとアドバイスを受けてきました。そういった時「なるべくトレモロは使うな」と言われるのは、良くあることです。とくに18世紀の音楽の場合(マンドリン作品であるなしにかかわらず)、そのように言われます。どうしても音を持続させたければ、トリルや装飾を入れるように薦められました。(チェンバロなどは通常そうするように)

基本的に音楽関係者には「トレモロが嫌い」という人は多いです。え、なぜ?と思われるかもしれませんが、マンドリン演奏者はトレモロの際に発する雑音、ピックと弦のこすれる音について、無頓着な人が多く、自分は気にならないのかもしれませんが、聴く側に取ってはとても非音楽的だと感じられるのです。そして、ピックを硬く持ち、腕を振って弾く奏者にはとても硬い音が多いですが、それも、音楽関係者からはいやがられます。

不思議なのは、マンドリン関係者は全くそのことに気づいていない人が多いということです。他にも、マンドリンの奏法では、音楽関係者から眉をひそめられることがいくつかあります。それはまた改めてお話ししましょう。

また時折、わたしがトレモロが不得意なのだろうという誤解を受ける事があります。これもまた全くの誤解です。
これだけは自信を持って言えますが、私のトレモロ演奏を聴いた音楽関係者は皆、驚きます。これまでに聴いて来たマンドリンとは全く違うと感じるようです。当然ですが、きれいな音で、柔らかいトレモロをし、表情豊かな演奏をすれば、音楽を愛する人には皆喜ばれるのです。音楽関係者に「トレモロが嫌い」という人が多いのは、「きれいでないトレモロをたくさん聴かされて来た」からなのです。マンドリン関係者はもっと反省すべきだと思っています。

私は、トレモロを含めて音色についてお褒めをいただくと、最高の喜びを感じます。速いフレーズが弾ける事より、何より、音色の美しさを最も大切にしたいといつも思っているからです。「音楽」をする以上「きれいな音」が最も重要です。いわゆる「技術」を見せつけるような演奏をしても、それは、その楽器を弾いている人に注目を受けるだけです。その楽器の、難しさ、特徴などを知らない人に魅力を感じさせるのはなんと言っても音色だと思っています。

それから、もう一つ、トレモロばかり演奏している人たちは、トレモロを使わないと表現が狭くなる、と思っていることが多いです。
これも勉強不足と言わざるを得ません。弦をはじいて演奏するのが本来のマンドリンですから、はじき方、音量の微妙な調節、などを研究すると、はじくだけでいろいろな表現をすることができると分かります。それでこそ豊かな表現力が出せるのです。その上でトレモロをすると、ただ音を持続させるためだけではなく、もっと効果的な使い方ができるようになります。

あるプロのマンドリン奏者が「マンドリン本来のトレモロ奏法」という言い方をしていました。私はそうは思いません。マンドリンの本質ははじく音です。トレモロはあくまで特殊奏法の1つ、と考えています。マンドリンの「特徴」ではありますが「本質」ではありません。だからこそその「特徴」を活かして、聴いてくださる方達にマンドリンの魅力を伝えたいと思っています。

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